メインクーンの肥大型心筋症(HCM)

【目次】


【要約】

■アメリカ土着の猫にまれにみられる遺伝性の心筋症で,メインクーン,メインクーンとの雑種猫に発症することがある。アメリカンショートヘアーでは症状が軽い。
■常染色体優性遺伝病である。
■オス,メスともに発症するが,オスのほうが発症年齢が低い場合が多い。

■健康診断や予防接種の時の心雑音で発見される事もあるが,心雑音のないケースもあるので,聴診だけでは判断できない。
■突然症状が出ることがある。呼吸困難,麻痺,突然死など。症状は重篤な場合が多い。根本的な治療法はない。

■メスでは発症年齢が高いため,保因猫(肥大型心筋症遺伝子を持っている)と知らずに繁殖に使ってしまう場合がある。オスでも発症前に繁殖に使ってしまう可能性はある。
■この病気は,保因猫を繁殖に使わなければ,キャッテリーから確実に除くことができる。

■検査は心エコーによる心筋の観察が確実であるが,若い猫では症状がまだ出ていない場合がある。オスは2歳,メスは3歳になったら検査を受けるのがよい。もちろん早めに検査を開始し,十分な年齢に達するまで毎年受けるのも良い。
■自分の猫の両親が十分な年齢に達していて,両親とも肥大型心筋症の徴候がない場合には,その両親から生まれた子猫は肥大型心筋症になる心配はない。
■肥大型心筋症の猫が先祖にいる場合,原因不明の突然死をした先祖がいる場合は,検査可能な年齢になるまで繁殖を控え,肥大型心筋症の徴候がないことを確認した上で繁殖に用いるのがよい。
■自分が繁殖した子猫が肥大型心筋症と診断された場合は,親猫のどちらかあるいは両方が肥大型心筋症の遺伝子を持っているので,このペアでの繁殖は停止し,親猫の心エコー検査を受ける。保因猫から生まれた子猫のオーナーすべてに肥大型心筋症を発症する恐れがあることを伝え,定期的に検査を受けるように勧める。また,子猫が検査可能な年齢に達して心エコー検査によって肥大型心筋症の疑いがないことを確かめるまでは,絶対に繁殖に使わないように指導する。

【さらなる注釈】自分の飼っている猫のなかに肥大型心筋症の猫を発見した時は,これ以上この病気を持った猫が増えないように周囲に働きかけましょう。
 ◎その猫は繁殖に使わないこと
 ◎その猫から生まれた子猫はシロと判断されるまで繁殖に使わないこと
 ◎その猫の両親,必要ならさかのぼって何代か先祖まで検査を受けること
親ブリーダーに連絡,説明,説得をする必要が出てくるでしょう。この病気について十分知識を持ってもらい, 不幸な猫を減らす努力を,親ブリーダーと一緒にしていきましょう。


(資料とりまとめ,新本洋士,2000/03/19)